世界を濡らす、やまない雨




有里に遅れて数時間後に退社すると、外はひどい雨だった。


コンビニに駆け込んで傘を買う人、軒先で雨宿りする人。


天気予報では雨が降るなんて言っていなかったから、私も傘を持っていなかった。


駅までそう遠くはない。


私は土砂降りの雨の中、ふらふらと会社のビルを出た。


屋根がある場所から外に出た瞬間、突き刺すような鋭い雨が頭に、肩に打ち当たる。


矢でも降ってきているみたいだ。


身体に当たる雨は痛いのに、私は走る気が起こらず駅の方へふらふらとした足取りで歩いていた。


軒先で雨宿りしている人や、どこかでビニール傘を手に入れたらしい人が土砂降りの雨の中ふらふらと歩く私を訝しげに見てくる。


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