Octave~届かない恋、重なる想い~
 
 15歳の私と、23歳の雅人さん。

 10年前のお正月、私は将来自分の夫となる人と、初めて言葉を交わした。

 その頃から好きだった人と結婚できるのは、幸運なのかも知れない。

 ただし、お互いが心の底から信頼し合い、愛し合える結婚だったなら、の話。


 今の私達は、お互いの利益と損得勘定によって夫婦になろうとしている。

 これしか方法がなかった訳ではない。

 他の方法を避けた結果、この方法・・・・・・政略結婚が残ったというだけの話。

 もう少し時間があったら、別の方法も模索できたのだけれど、今はこの方法がベターだと私も周囲も、そして雅人さんも考えた。


 あと4年、雅人さんとの契約を守らなくては、私に本当の自由はない。

 親の庇護から飛び立って、私個人を認めてもらうまでは、偽りの夫婦のままでもいい・・・・・・。

 一方的な私の想いは、雅人さんにとって重荷でしかない。だから自分の想いは4年間封印しようと決めた。

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