Octave~届かない恋、重なる想い~

「いいんだよ。君の気持ちを軽くできるなら、どんな愚痴だって聞くから。
 もしかしたら、二人で何かいい方法を探せるかも知れないし」

 そう言って、雅人さんも綺麗にナイフを使っている。

「さっきの話に戻るけど、結子さんはこれから先の事をどう考えている?
 もちろん、お父さんや伯父さんは、とりあえず君に地盤を継いで欲しいんだろうけど、嫌なんだろ?」

「……はい」

「それじゃあ、お父さんの対立候補に『宇佐美の地盤』を取られても、諦められるか?」

「……」

 お父さんが6期に渡って、1から作り上げてきた地盤が、なくなってしまう。

 あんなに苦労して支えているお母さんの努力が、無になってしまうような気がする。

 それを考えると、心が揺れた。
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