初恋シグナル~再会は恋の合図~
「……ごめん、鈴本くん。気持ちはありがたいけど、やっぱり私」
「ハイハイ。好きでもない人と付き合うとか無理だって言うんだろ?
……いーよ。長谷川がそういうことできるヤツじゃないって知ってるし」
苦笑してそう言う鈴本くんに、私はもういちど「ごめんなさい」と頭を下げた。
「それより早く行けば?坂梨には俺から先に帰ったって言っとくからさ。
追いかけたいんだろ、あいつのこと」
「!」
どうして分かったんだろう。
そう思ったけど、それを訊く時間も惜しくて。
私は「うん、ありがとう!」と言って部屋に置きっぱなしだった自分の荷物を引っ掴み、駆け出した。
「あんだけ分かりやすく好きなのに気付いてないとか…、どんだけ鈍感なんだよ」
ひとり廊下に残された鈴本くんの、苦笑まじりの呟きは。
賑やかに鳴り響く店内のBGMに埋(うず)もれて。
私の耳に届くことはなかった。