初恋シグナル~再会は恋の合図~
辻村くんの、表情が。
声が。
……この目の前の少女が、辻村くんにとって何でもない存在ではないと、語っていたから。
「こんなとこで会えるなんて」
彩織、と、そう呼ばれた美少女は、泣きそうな顔で、笑った。
その弱々しい笑みが、儚げで。
女の私ですら、ドキッとしてしまう。
「……えと…、お友達?」
私を見ると、彩織さんは首を傾げてそう訊いた。
目が合うと、微かに唇の端を上げて微笑んでくれる。
「あの、私」
「行くぞ」
「え……」
名乗ろうとした私の声を遮って、辻村くんは唐突に私の手を掴んだ。
そしてそのまま彩織さんに背中を向けると、ずんずんと足早に歩き出す。
「ちょ……っ」
戸惑ったまま抵抗もできずに、私はただただ辻村くんに引かれるままに歩くしかない。
「真二くん…!」
後ろで、彩織さんがそう叫んだのが聞こえたけれど、辻村くんが振り返ることはなかった。