初恋シグナル~再会は恋の合図~
辻村くんには前半は1人だったマークが後半に入って2人もついている状況で、思うようにプレーができないはずなのに。
なのに、強く早いパスを、……きっと辻村くんにとって出しやすいパスを出せるようになったことで、むしろ前半より生き生きして見えた。
長くボールを持つよりワンタッチでパスを出すことが多く、改めて辻村くんの判断力や視野の広さに感嘆させられる。
それに、ボールを持ったところで相手に囲まれても、藤桜の選手相手にそのボールを取られるということがかなり少ない。
素早い状況判断に、広い視野、並はずれたキープ力、そして高い技術。
前半より自分の力をセーブすることをやめたのか、明らかに辻村くんはピッチに立つどの選手より上手かった。
目立っていた。
……藤桜相手に、まさか個人の能力の高さを自分のチームの選手が見せつけてるなんて。
本当に、少し前までは考えられなかった。
去年までならきっと、逆だった。
それに。
もしかして、辻村くんにはうちのチームよりその力を生かせる場所があるんじゃないか。
……そう思ってしまった。
だって、パスの強さに制限がなくなった、それだけでこんなに違うんだもん。
口には出さないけど、きっと辻村くんはうちのチームのレベルに合わせてプレーしてくれてたんだ……。