初恋シグナル~再会は恋の合図~
「辻村くん……っ!」
審判が一度、時計を見た。
もうほとんど時間は残されていない。
これが、ラストチャンスだ。
最後のDFを抜き去り、辻村くんの前に立ちふさがるのはゴールキーパーただひとり。
辻村くんは。
何のためらいもなく、その足を思い切り振り抜いた。
「……っ!!」
一瞬の静寂。
その静寂を切り裂くようにして聞こえてきたのは、ホイッスルの音。
……ざあっ、と、まるで選手たちを労わるような涼やかな風が、ピッチを吹き抜けた。