初恋シグナル~再会は恋の合図~


なにぼーっとしてるの、私。


しっかりしなくちゃ。



「……」



だけど、そう思えばそう思うほど、私の頭を混乱させていた修学旅行の辻村くんのいきなりの接近が思い出されて。



「……私の、思い上がりなのかな」



……あの日。


修学旅行で熱を出した日。


目を覚ました瞬間、少しでも動けば触れてしまいそうな距離に辻村くんがいた。



……キスの距離だと、思った。


びっくりして、混乱して。


焦ったように部屋を出ていく辻村くんをあの時の私はただただ呆然と見送ることしかできなかったけど。


でも、恋愛初心者の私でも、あれがそういう距離だって勘違いしてしまうほど、近かった。



……やっぱり、勘違いだったのかな。


それとも、熱のせいで見えた幻覚?


あれから辻村くんはそのことについてはなにも触れないし、むしろなんだか避けられている気さえする。



「……はあ」


思わず、溜息。


わかんない。


わかんないよ。


辻村くん、私、少しは期待してもいいの?


辻村くんの気持ちが、少しは私に向いてるかもしれないって────。



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