明日なき狼達
 児玉達は何度も道を変え、やっと予定の中継地点に着いた。予め浅井が用意した中継地点は、古い自動車整備工場の跡地だった。債権の取り立てで差し押さえた町工場だ。適当な広さがあって、荷を積み替え、車を取り替えるには都合がいい。

 浅井は二人の若い者に、トラックのナンバープレートを交換するよう命じた。

 自衛隊のカーゴは後で解体処分にでもするしか無い。

 工場の入口を締め切り、カーゴから奪った武器と弾薬をトラックへ移した。

 奪った武器は、89式自動小銃が10丁。実弾はマガジンに装填された物が100個……3600発分。

 イングラム5丁。実弾装填済みマガジン30個。実弾数1000発余り。

 手榴弾20個。

 自動拳銃10丁。実弾は14発入りマガジンが50個余り。

 加代子が荷をトラックに移している時に大きな箱に目が止まった。

「ねえ、軍服も盗んだの?」

 神谷が箱に書かれている英語の綴りを読んだ。

「コンバット……セーフ、ジャケット……防弾用のジャケットだな」

「あんた達ますますランボーやシュワちゃんになっちまうねぇ」

「スタローンの方が俺より年上なんだが」

「腹の弛みはあんたの方が間違いなく二回りは年上だね」

「しかし、これだけあれば、ヤクザが何百人来ようと負けないな」

 加代子と神谷の横で、梶が自動小銃の操作を繰り返していた。

 児玉が防弾ジャケットの箱を開け、全員に渡した。

 服の下に来て、目立たないように上からシャツやジャケットを重ね着するよう皆に言った。

 別な箱を開け、弾薬帯と雑嚢を取り出した。弾薬帯に予備弾倉を装着し、手榴弾は雜嚢に入れた。

「さて、次はいよいよ滝沢との決戦だ」

 野島は気持ちを高揚させ、手にした自動拳銃を腰に2丁差した。

 松山はずっと押し黙ったまま、黙々と手榴弾を雜嚢に入れている。

 全ての作業を終えると、浅井が若い者に食料を仕入れて来るよう言った。

「戦の前の腹拵えと言ったところですな」

 児玉の軽口は、皆の緊張を幾分解きほぐした。

 廃屋の居住部分に入り、食料を仕入れに行った者を待った。

 時計の針は丁度、正午を示していた。

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