セク・コン~重信くんの片想い~

 恵太は知らない。
 重信がずっと恵太を好きだということを。
 そしてそれは、友だちとしてではなく、恋愛の対象としての好意だということを……。

 重信は、すぐ脇を歩いているのに、恵太がどこか遠くへ離れていってしまうような気がしてならなかった。
 けれど、全てを打ち明ける気はさらさら無い。だって、ここで自分がゲイだということを彼に話したところで、状況は何もよくならないということが分かっていたから。
 もしも重信がゲイだと知れば、彼はきっとひどく驚くだろう。知った途端、気味悪がって離れていくかもしれない。いや、優しい彼のことだから、その場は否定せずに話を聞いてくれるだろう。でも、心の中では重信のことをどう思うだろうか……?
 だから、重信は親友としての関係を自ら捨てるようなことは決してしない。例え、どんなに辛くとも、耐え忍び友人を演じ続けることで、恵太との今までの関係は余程のことが無い限りは続いていく筈だ。
「ってな訳だよ。今度ハギにも美雪紹介するからさ。ほんといい子だから、楽しみにしてて」
「……おう」

 帰り道の分岐点、いつもの別れ際、重信は残酷な一言で完全に深い絶望の渦の中へと落ちていった。

「……んだよ」
 彼と別れた後、重信は無意識に唇を強く噛み締めていた。握り締めた拳に自らの爪が食い込んでいることさえ気づかずに。

 重信は失恋した。
 5年に及ぶ長い片想いは、決して表に出ることなく、こうして密かに燻って消えたのだ。




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