セク・コン~重信くんの片想い~

「そう言えば、ハギ。アオイのこと探してたんじゃなかったっけ?」
 恵太の一言でやっと現実に戻ってきた重信は、突如アオイに向き直り、握っていた飲みきりサイズの牛乳パックと、カルシウムたっぷりビスケットを差し出した。
「ん」
 真面目な顔してそんな物を差し出してきた重信を、アオイがぽかんと見つめる。
「オレに?」
「カルシウム」
 しばらく沈黙が続いたが、ぷっとアオイが噴き出した。
「なに、お前! まじでオレの身長伸ばそうとしてくれてんの!?」
 こっくりと頷いた重信を、アオイは可笑しそうに笑いながら見上げる。
「ハギっていい奴だなー、恵太」
 ポンと恵太の肩に手を置き、アオイは目尻に涙を浮かべなから笑っている。無口で一見無愛想そうに見える重信とのギャップが、余程面白かったらしい。
「だろ? すごい口下手で、あんま考えてること口に出さないけどさ。ハギはハギなりに、アオイに何かしてやりたいって思ったみたい」
 恵太の言葉を聞いて、重信は急に顔に熱が上がっていくのを感じ、照れを隠そうと黙ってそっぽを向く。
「そっか。んじゃ、有り難く貰っとくわ」
 重信の手から飲みきりサイズの牛乳パックと、カルシウムたっぷりビスケットを受け取ると、アオイはさり気なく重信の腕をポンと叩いた。

(!!!!!)
 
 アオイからのスキンシップで、重信の頭が一気に真っ白になる。勢いで昇天してしまいそうな程に。
 けれど、その重信の心情をアオイも恵太も全く気付いているようすは無い。
 それが、重信にとっての大きな救いだろう。
「ちょうど今って、腹減る時間帯なんだよな、サンキューな」
 アオイの一言を聞いて、重信はある決心を固めるのであった。
 これから毎日でも、彼の元に牛乳とビスケットを届けよう、と。



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