守りたいから
握った拳が、恐怖で震えた。
気付いたら、唇から血の味がした。

「あたしを、抱いて。」

頷くしかない。
彼女の意図が、分からなくても。
女性を抱いた事が無くても。
それが、彼の為になるんだ。

なのに、俺は。
首が石になったのか、それとも唇が縫い合わされたのか。
返事が、出来ない。

それに焦れた彼女は、再び俺にキスをする。
しかも、舌まで入れてきた。
頭のどこかは冷静で、気持ち悪いのに、拒めなくて。
思い出したのは、彼の優しい笑顔。

これは、裏切り。
彼の事を守る為だと、自分に言い聞かせても。

「ねぇ、返事をしてよ。」

キスの合間に、小さな声で苛立たしげに。

俺は目を閉じる。
嫌悪感を押し殺して、返事の代わりに舌を絡めた。

ごめん。
こんなことしか、俺では貴方を守れない。
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