蓮華〜流レルママニ〜

出逢い


それから私は、再び病院の外に出た。何故なら、夜だというのに病院内は非常に慌ただしく、混沌とした空気が流れていたから。

それに、沙耶姉チャンと翔サンの事故で、完全に真っ白になった頭を冷やしたかった、というのもある。

外は、どしゃ降りで、嵐でもくるのかと思わせるような豪雨だった。
それでも構わず、その中へと歩を進めた。

天明総合病院。
私たちの住む天明という町の中で一番大きな病院で、すぐ隣には港がある。海が近いので、こんな日は風がとても強く吹き荒れる…

「おいっ。何で今日はこんなに患者が運ばれて来るんだっ!?」

「…そんな事私に聞かれても、わかりかねますよ」

病院関係であろうと思われる人たちが、何やら険しい顔で話している。
それもその筈…
ひっきりなしに救急車が行ったり来たりしているんだもの。

外に出て、僅か数秒と経たずに、身体はびしょ濡れになった。それでも、沈んだ心を動かすには事足りない…

そう感じた、その時。

暗がりの向こうに、一人の…人…が立っている姿が目に入った。海岸沿いの防波堤付近で、私と同じくずぶ濡れになっているのだ。

自分もそうなのに、その姿はとても不可思議に映った。

気になって、その方へと歩み寄る。


男の…人…!?

海の遠くを見つめているような、そんな視線…いや、哀しい目をしてる…

襟足の長い、黒くて真っ直ぐに伸びた、雨に打たれるその髪は、表情(かお)を隠すように包んでいる…

「…あの…風邪ひきますよ…?」

自分もずぶ濡れで何てバカげた発言だろう…
それでも、目の前に立つその人に、声をかけずにはいられなかった。
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