real world
帰りの電車の中、直人が突然話を切り出した。


「なぁ花音。俺、歌手やらないかってスカウトされたんだ。」


「え?歌手直人が?」


そんなに歌、うまかったっけ。


「正確には4人で組んだアイドルなんだけど。」

なるほど。顔と性格は良いもんね。ついでに頭も。


「それで?どうするの?おばさんはなんて?」


「まぁ当然のごとく猛反対だな。『せっかく聖華に入れたのに』って、さっきも。」


直人のおばさんは堅実な人だからなぁ…無理ないかも。


でも、


「直人はどうしたいの?アイドルやって、聖華に通う自信あるの?」


問題は直人がどうしたいかだと思う。


「正直わかんねぇな。でも…―やってみたくはあるな。」


「じゃあ、頑張って説得しよう。」


怖くても進む事は大切だと思うから。


「頑張れ。」


「そうだな―…」


そう言って、直人は笑った。


『かなで、かなで駅でございます。』


「着いた。行こう家に寄るんでしょ?」


「おう。」


電車を降りる。家に向かう。


制服の白スカートが、ばたばたとはためいた。




ここから、世界が変わる。


現実へと。
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