夢の欠片
思い返せば友達なんかいたことがなかった。周りにいるのは嫌がらせをしてくる怪物達で、学校は地獄のような存在だった。


今、また地獄へ来ている。耐えなきゃ。地獄なんて、あと数年の辛抱だ。


「紹介します。咲森優奈さんです」


「よろしくお願いします」


このクラスの担任と思わせる教師から紹介を受け、私は軽く礼をした。そして、適当に空いている席に座り、鞄を置いた。


すると、今まで経験したことがなかった出来事が起こった。


「優奈ちゃん、私ね、古川陽菜って言うの。よろしくね」


話しかけられたことなんかなかった。私はドギマギして、顔を合わせることができなかった。


「よろしく……ね」


陽菜と名乗った隣の女子を見てみると、私と印象が正反対の人だった。


長年いじめられていた私は、心から笑えない、人に話しかけられないなどの一つ一つの行動が積み重なって、明らかに近寄るなというオーラが流れているのに、陽菜は自然な笑顔で初対面の私に話しかけられるほどの人物で、本来私が関わりさえ持てないような存在だ。


そんな彼女だったから、私はがっかりした。


今までの経験上、そのような人はクラスの中心にいるような人で、いずれ陰に目を向けなくなる。だから、いじめに関しては高みの見物か、中心に入るかのいずれかになるのだ。


いじめから助けてくれる人は、経験者か、ごく稀にいる偽善者くらい。私が友達になれる存在と言えば、同じ境遇にいる人くらいだ。


……私は、この人と友達になれない。
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