金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

夕闇が迫って来ると、私たちは公園を出て、自転車を押しながら二人で歩いた。



「……本当に、なかったことにするの?家の人に話した方がいいんじゃない?」


「ううん……いいの。もうすぐ卒業だし、おおごとになったら困る。
別に岡澤に謝ってもらいたいとも思わない。
とにかく、一刻も早く忘れたい」


「そっか……」



私はそれから、有紗と話しているうちに思いついたことを口にしてみた。



「私……有紗と一緒の高校に行こうかな」


「えっ!?それはダメだよ、千秋ならもっとレベルの高いとこ行けるのに……」


「……でもS高にはもう行きたくないの。岡澤が本当に私の内申をいじったかどうかは知らないけど、合格しても素直に喜べない」



私の言葉に、有紗はうーんとうなった。そして自転車を押すのを止め、私を真剣な目で見つめた。


「……千秋、後悔しない?」


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