金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

水族館を見学した後は、ホテルに戻るだけというスケジュール。

だけどホテルに着いてからが本番だ。

私が部屋のベランダで風に当たっていると、プライベートビーチで泳ぐことを楽しみにしていた生徒たちが続々と海に飛び出していくのがよく見えた。



「うちらも、早く着替えて行こう!」


「そうね、せっかくの沖縄なんだし」



同じ班の有紗と菜月ちゃんは、部屋も一緒。

二人ともさっさと水着に着替えると、私を振り返った。



「千秋ちゃんは、行かないの?」


「うーん、ちょっと疲れたから、休もうかな」


「行こうよ千秋、みんなで遊べばブルーな気持ちもきっと晴れるよ」


「ありがと、有紗。でもちょっと、一人になりたいの」



二人の誘いを断るのは心苦しかったけれど、私はそう言って部屋で一人にさせてもらうことにした。

私だって、本当は泳ぎたいけど……もしも先生がそこに居て、また切なそうに海の方を見ているかもしれないと思うと、行きたくなかった。


先生のこと、支えてあげたいのに、こんなんじゃ、全然だめだ……


私はベッドにうつぶせになりながら、少しだけ滲んでしまった涙を、枕に押し付けた。


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