金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

ユキヤナギ


「―――恩田先生、校長がお呼びです」


「校長?今行きます」



たまたま通りかかった職員室前で先生たちがそんな会話をしているのを聞いたのは、先輩たちの卒業式が終わって数日後のことだった。


私は資料室に行く途中だった。


そろそろ、進路のこと考えなきゃいけないのかなって漠然と思い始めていて、大学の資料を少し見るつもりだった。


先生からも、最近よく言われるんだ。「千秋は、進路どうするんですか?」って。


でもまだ何も決まってないし、そんなことより今は先生のことだけ考えていたいという私に、先生はいつも困った顔をする。



「嬉しいけど、大切なことですからね。少しずつでも、自分の将来のことを考える時間も増やしていってください」



恋人であり担任でもある先生にそう言われてしまったら、「はい」と言うしかない。



「……どれから見ればいいんだろ」



普通の教室より狭い資料室には、色んな大学、短大、専門学校の資料や赤本が並んでいる。

パソコンも何台かあって、知りたいことをネットで調べられるみたいだ。


でも、私が一番知りたいことはネットにつないでもわからない。


将来何になりたいのか、どんな大学で何を学びたいのか……

自分の頭の中にしかあるはずのないことが、まだ白紙なんだもん……


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