金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
久しぶりに見る先生の家の庭は、たくさんの花が春を彩っている。
柔らかな色と香りの中をゆっくり進み、日当たりの良い縁側に腰を下ろした。
先生、いつ頃帰ってくるかな……
緑の芝に足を投げ出して、ぼんやりと庭を見渡す。
あ……ユキヤナギも、あったんだ。
白くて小さな花をいっぱいにつけたそれは、庭を明るい印象にしている。
やっぱり、春はいいな。
太陽の光は優しいし、花たちは嬉しそうだし……
目を細めて庭を眺めているうちに、私は眠くなってきてしまった。
だめだと思っても降りてくるまぶたに打ち勝つことができなくて……
縁側に座ったまま背中を窓に預けて、私は眠りについてしまった。