金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

久しぶりに見る先生の家の庭は、たくさんの花が春を彩っている。

柔らかな色と香りの中をゆっくり進み、日当たりの良い縁側に腰を下ろした。


先生、いつ頃帰ってくるかな……


緑の芝に足を投げ出して、ぼんやりと庭を見渡す。

あ……ユキヤナギも、あったんだ。

白くて小さな花をいっぱいにつけたそれは、庭を明るい印象にしている。

やっぱり、春はいいな。

太陽の光は優しいし、花たちは嬉しそうだし……


目を細めて庭を眺めているうちに、私は眠くなってきてしまった。

だめだと思っても降りてくるまぶたに打ち勝つことができなくて……

縁側に座ったまま背中を窓に預けて、私は眠りについてしまった。


< 335 / 410 >

この作品をシェア

pagetop