金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
もうこれ以上ドキドキさせないで欲しい。
初めてのことばかりで、私の心も脳も、とっくに限界を超えている。
改札の上にある電光掲示板を見ると、電車が来るまであと二分。
今度こそやっと、一人になれる。
そう思って、気を抜いた時……
「――――千秋ちゃん、俺と付き合わない?」
駅を行き交う人々の足音、話し声、列車のダイヤを知らせる駅員さんの放送……
ざわざわしているはずのこの場所で、先輩の声はまっすぐ、私の耳に届いた。
「……先輩、それって」
「もちろん、告白。今日一緒に遊んでみて、千秋ちゃん可愛いなーって思ったからさ」
「………………」
……何かが、違う。
小さな違和感が、私の中に生まれた。
嬉しいはずなのに、喜べない。
それがなぜなのかはわからないけれど……
「今日はもう時間ないし、返事は電話かメールしてくれればいいから」
「…………はい」
なんでだろう……
さっきまでのときめきが、半分くらい減ってしまった……