金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
お昼は先輩のおごりでパスタを食べた。
自分の分は自分で払うと言ったのに、先輩は断固としてそれを許してくれなかった。
外に出て、再び手をつないで歩き出したときに私はカバンからお財布を出して言う。
「やっぱり悪いです……!」
「いいって。だって千秋ほとんど食ってなかったし」
「……ごめんなさい」
二人で向かい合って座っていたら、胸がいっぱいで食事どころじゃなくて。
私は自分の注文したあさりパスタを、半分以上残してしまったのだ。
「謝んなくていいから。ほら、次行くぞ?」
次……と言って先輩が私を連れてきたのは、大きなショッピングビル。
先輩はそういえば服を見たいと言ってたっけ。
「千秋って、こういうの着たことある?」
あるお店のショーウインドウにディスプレイされたマネキンを指さして、先輩が聞いてきた。