金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
恩田がゆっくり近付いてきて、私のかたわらにしゃがみこむ。
「……そろそろ、楽になろうよ。こんなことを続けたって気は晴れないでしょう?」
「………………」
「僕は、きみが何か話してくれるまでここに居る。いやだと言われても、ここに居る」
「………………」
恩田の言葉に、少しだけ泣きそうになる自分が居た。
だけど、信じるのが怖い。
また、裏切られるのが怖い。
自分の気持ちをごまかすように、儀式に没頭する。
全く周りが見えていなかった私は、恩田の手が穴だらけのアルバムの上に置かれたことに気づかなかった。