恋する生徒




「すみません…」




落ち込み気味の声に俺はよりいっそう、自己嫌悪に落ちていく。


茜ちゃんは、机に向かってから俺を一度も見ない。



居心地が悪い…。
早く終わって欲しい。



今までだったら、茜ちゃんと一緒にいる時間が嬉しくて、終わって欲しくないのに、早く終わる寂しさがあって、帰り道は寂しくて、楽しくて…けど、今は息苦しさが纏う。



一向に、俺の方を見ない茜ちゃんに言いようのない苛立ちを抑えて、こちらを見ない彼女の様子をもう一度見て眉を潜める。




「…体調でも悪い?」



「大丈夫、です」




優しく尋ねたんだけど、冷たく返された。



…話しかけないで欲しいって事か? 今は、勉強中だろ?


しかも、勉強してるならまだしも…何もしてないのに…そう思うと苛立ちが込み上げてくる。



「……。茜ちゃん、集中出来ないなら今日はもうやめよう」




そう言うと、弾かれたように顔を上げて目を丸めて俺を見るけど、それを無視してノートを片付けていく。


「ぇ…? な、何で? ちゃんと集中するからッ…!」




バンっ。




静かな部屋に響いた教科書を閉じる音は、俺の苛立ちへの見切りをつけるため。






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