【短編】異端の二人
「名前は何というのですか?」


ナナは更に質問を続けた。来訪者の名前を尋ねたのだが、ナナが本当に聞きたかったのは、その答よりも来訪者の声無き声。つまり、来訪者の真実だった。しかし……


「タカと言います。何度試しても無駄ですよ。どうか今すぐこの扉を開けてください。そうすれば、全てを説明してあげます」


ナナは驚愕し、目を大きく見開いた。タカと名乗る来訪者は、あたかもナナの特殊な能力を知っているかのような口ぶりだったから。


ナナはタカへの警戒心を高める一方で、タカの言葉を考えてみた。タカは、ナナの名前を知っていた。そして、ナナの亡くなった父親である天馬博士を知っていた。しかも、その天馬博士から指示されて此処へ来たと言った。


タカへの警戒心はそのままに、ナナは扉のロックを解除した。孤独の心もとなさがナナを弱くしていた事と、なぜタカの声無き声が聞こえないのか、その謎を解きたかったから。

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