イベリスの花言葉。


彼女が眠るベッドの下には埃を被った写真たてが一つ、放られていた。
一枚の紙に閉じ込められた3人の時間。
日本で撮ったものだろうか、振るい街並みを背景に小さな女の子と両脇に立つ男女。
3人はまぶしい笑顔をこちらに向けていた。
「あ、あー…リオン?」
扉の向こうから、男性の声がした。
返事がないことを確認したのか、鍵をあける音が響いた。
廊下から漏れる微光だけでは良く見えなかったのか、なかに入ってきた男は部屋の電気を付けた。
小さなシャンデリアがきらびやかな光を放つ。
男は、写真に写る男ではないようだった。
「リオン?」
もう一度、男が遠慮がちに声をかけるとリオンは目を覚ました。
枕元に人の気配を感じると短い叫び声を上げてベッドに潜り込む。様子を伺おうとするリオンに男は口を開いた。

「リオン、私だ。」
「オジサン…」
リオンは不安に刈られた瞳を目の前の男に向けた。



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