* another sky *

「あのね、私、今日、ちゃんと自分の口で言いたいことを伝えられたの。」


「そっか。良かったな。」


私を見下ろす優しい瞳が、さらに細くなる。


「翼のおかげ、かな。

過去は過去だって…、ちゃんと言えたから。」


「ああ、それは違うよ。

俺じゃなくて、玲はちゃんと、自分と向き合ってるんだよ。」


「ん、――――――。

でも、少しずつ、自分の中で整理されてるのがわかるんだ。

それはね、―――。」


私は翼から同じ匂いがすることに、気が付いた。

そっか、うちでお風呂に入ったから、同じ匂いなんだ…。


「翼が…、私のことを面倒くさがらずに、ずっとそばにいてくれたからだよ。」


翼の頬にそっと指を伸ばす。


私はやっぱり、この人の持つ、空気感が好きだ…。


「当たり前じゃん。

玲のこと、好きなんだから。

でも、俺がきっかけって言ってくれるのは、嬉しいな。


「この家に、人が来たの、初めてだよ。

あ、お母さん以外で、なんだけど。」


「まじか。」


翼は目を細めて、笑う。


「私、翼の、『まじか。』って好きだなぁ。」


「ったく、―――。

そんな細かいとこじゃなくてさ、俺の全部を好きって、言ってくれよ。」


わざとらしく悔しそうな顔をする翼が可愛くて、つい、

「翼って可愛いね。」

なんて言ってしまうもんだから、またくすぐられて泣き笑いになる。
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