* another sky *

いつの間にか、人気のいなくなったロビーに響く、すすり泣く、声。


聞きたくないのに、身体が、もう、動かない…。



「俺は、玲を手放したこと、ずっと後悔してた…。」


―――――――!!


「本当に、ごめん。

玲のこと、傷つけてしまって…

本当にごめん。」



ああ、やっぱり……。


最初から勝負になんか、なっていなかったんだ…。



「…馬鹿っ……。

すっごく、好きだったのに。

航太だけしか、見えなかったのに…。」



玲の言葉に、私は唇を噛みしめた。



「少しだけ、このままで――。」



離したくない、―――――。



航太の思いが、ひしひしと伝わってくる。



引き寄せられるかのように絡み合う、二人の、視線。



嫌だ…。


見たくない…。



―――――――!!



航太が、玲を抱き締める。


壊れないように、壊さないように…。



ああ、……。


背中越しにも、伝わってくるよ。



まだ玲を、……愛してるんだね…。



「……っ!!」



このままじゃ、駄目だよ…。



私は慌てて立ち上がると、ロビーを抜けた。


エレベーターを使わず階段で上り、病室のベッドへ潜り込んだ。



泣いちゃだめだ。


航太が来るから。



何事もなかったように、しなきゃ。





ねえ、航太、―――――。





別れて、あげる。


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