* another sky *

言ってしまってから、後悔した。

大きく見開いた玲の瞳から、大粒の涙が零れ落ちていく。

瞬きさえ出来ずに、固まってしまった玲。


…っ、言い過ぎだ……。


俺は勢い良く起き上がると、ベッドルームを出てリビングへ向う。


頭、冷やさないと……。

また玲が口を開いたら、……。

さらに追い詰めた言葉を吐いてしまいそうだ。


茫然とした表情で、玲は俺の動向を見つめていた。


「…たす、く…。」


玲の視線が、俺の背中を追いかけているのはわかっていた。


「…待って、…。」


テーブルの上に出したままの荷物をリュックに詰め、家の鍵を持ってリビングから出ていく。


「ね、…どこ、行くの…。」


今、この空間で玲と一緒にいるのが辛かった。

玲を悲しませてしまうことぐらい、わかってる。


それでも、――――。


どうしても、許せなくて。


俺ならきっと、聞き入れると思ってたんだろう?

仕方ないな、って、言うと思ってたんだろう?


やっと俺だけの玲になったと思っていたのに。

玲はいつまで経っても、あいつに縛られている。


ただ。

玲はわかって話をしていた。

俺が何も言えなくなるだろうって。


そこが一番ムカつくんだ。


俺じゃなく、あいつを理由に断ることに、何の罪悪感も持っていないことに。

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