* another sky *


翼がいない。


もうすぐ披露宴が始まる時間なのに。

どこ行っちゃったのかな…。

翼を探して、さっきまでいたロビーに急いで戻ってみる。


あ、――――。


ロビーへ戻ると、相変わらず写真撮影に応じている翼がいた。

いた…。

笑顔で応対している翼を見て、ほっとした。


そして―――。


ほっとしたのと同時に、目の前の光景にいたたまれなくなった。


翼にもたれないで。

腕、組まないで。

翼も、肩なんか抱かないで!!


いき場のないヤキモチが空しくて、顔が引き攣ってしまう…。


「玲、――?
写真、終わったの??」


翼は私を確認すると、颯爽と歩いてこちらへやってくる。


いつもの、翼だよね??

何も、聞いてないよね??

ただ、探せなかっただけだよね??


そんなぐしゃぐしゃな思考に苛まれて。

出てきた言葉は馬鹿みたいに情けない、ヤキモチ。


「…肩なんか、抱かないでよっ。」


「え、――??」


驚いて目を見張る翼に、畳み掛けるように訴えた。


「写真、撮るのは仕方ないけど、腕とか組まないで。

もう、見たくないもんっ。

翼が、翼が、他の女の子とにこにこ笑って、肩なんか抱いちゃって…。

目の前で見せられるの、もう、嫌なの!!」


―――――!!


「玲、―――??」

< 670 / 769 >

この作品をシェア

pagetop