* another sky *

「ほら。あんたは静かにしてなさいっ。」


「はーい。」


梨花さんに軽くあしらわれ、玲は素直に返事をする。

勿論、あいつの視線も遠くから感じた。

でも、そんなことはもう、どうでもいい。

タクシーに乗り込むと、玲はすっかりおとなしくなって眠ってしまったんだ。


「…たすく、どこ?」


ベッドルームに運び込み、そっと寝かせると甘えた声で俺の名前を呼ぶ。


「起きたの?

玲、ドレス、脱げる?」


「はーい。」


意識があるのか、ないのか。


てきぱきとルームウエアに着替え終わったとたん、玲は意識を手放した。


あーあ。

今日はたっぷり愛し合おうと思っていたのに。

ま、こんなもんだな。


「んー。」


幸せそうな顔、しちゃってさ…。


寝がえりを打つ玲の、前髪を掻き上げた。

可愛いなあ…。

こういうの、俺と一緒の時だけにしてほしいんだけど。

明日はきっと、何も覚えてないんだろうなあ。

真っ赤になって慌て出す玲を想像して、可笑しくなる。


はあ―――。

疲れた。

…あいつ、何が言いたかったんだろう。

だけど、これでもう、会うこともない。

終わった、ってことでいいんだよな。


シャワーも明日にして、俺も寝よう。

玲の額にそっとキスを落とす。

柔らかな唇に、ちゅ、と音を立てて。


この続きは、また、明日、な。
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