Enchante ~あなたに逢えてよかった~
10 エピローグ
TVからキャスターの興奮気味の声が日本人初の快挙を伝えていた。
テニスの四大大会の一つである大舞台での準優勝だ。
優勝者のイギリスの王者が霞んでしまうほどの過熱報道は無理もない。



「お待たせ~」

「遅い~~」

「ちょっとアンタね、この暑い中、買出ししてきて上げたのよ?
もう少し労いなさいよぅ」



キャサリンはバラの花柄のタオル時のハンカチで首筋の汗を拭いながら
反対の手に持っていた紙袋を掲げた。


「日曜だからか、やたら混んでて40分も並んだんだからね」

「はいはい、ありがとう。感謝してます」


つい先日オープンしたばかりのテイクアウト専門の中華料理を
一緒に食べようとキャサリンからメールをもらったのは3日前のことだ。


「その はいはい っていうの、適当さ全開な感じがするのよねえ」

「そんなこと ないない」

「ホラ、また言った!」

「え?」

「アンタってさ、そうやって よく言葉を繰り返して言うわよねー」

「そう?」

「そうよ!どーにも適当にあしらわれてる感が否めないというか
相手に対する配慮が足りないというか・・・」


くどくどと長くなりそうな話を断つかのように絢子は
はい!と冷えたビールとグラスをキャサリンの目前に差し出した。


「ちゃーんとグラスも冷やしておいたから」


キャサリンはにっこり微笑んでグラスを受け取った。



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