89×127

腕を掴まれて、無理やり立たされる。


「え、なに、を…」

「一緒に来てください」



有無を言わせず引っ張る中川くんについていくことしかできない。


廊下で松下たつのりとすれ違ったが「一時間目にはちゃんと出ろよー」とだけ言われて助けてもらうことはできなかった。

いつもは口うるさく言ってくるくせに、こういうときばっかり使えない奴だ。



そのまま使われていない教室へ入る。

この教室は中川くんがお兄さんの弟だと打ち明けてくれたあの教室だ。



「あの、中川くん…?」

「先輩は勝手です」


「…なにが?」


「なんで、急にやめるんですか?俺に用事があったんじゃないんですか?昨日だって、追いかけてきたと思ったら帰っちゃうし、俺のこと嫌いなら、構わないでくれたらいいのに、写真だって、あんな顔されるくらいなら、別にいらないのに…」


あたしの腕をつかんだまま、足元に視線を落とし、あたしの方を見ることなくそこまで言い切った中川くん。


なんでこんなこと言われてるんだろう。

会いに行っても避けてたのは中川くんだ。
ならやめたって構わないじゃないか。
写真は…いらなかったのか。




「写真、いらないなら…返して」


思っていたより冷たい声になってしまったのは、悲しむ心に気づかれたくないからだろうか。



「い、嫌です」

「いらないんでしょう?」

「でも、もう俺のです。ダメです。そ、それより、昨日、俺に何の用事だったんですか?」



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