竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

「でも食べなきゃそれはそれできついんじゃないの?」



そもそも彼女が食欲不振だなんてつまらない。

福々しいのが直子のとりえ。おいしそうにものを食べている姿を見ていると、こっちまで気分がよくなるのだ。


老若男女問わず、人に好かれるって、直子みたいな子の特権だよね、ほんと……。


彼女が『和菓子売り場のおばさまたちに餌付けされている』と嘆いていたのを思い出しながら、エリは残っていたうどんをつるつると口に運び、ごちそうさまと手を合わせた。



「そうなのよ、ダイエットなんて永遠に無理ね……」



直子はため息をつきつつエリの言葉に同意すると、ふと、思い出したようにエリの顔を見つめる。



「そういえば、今月はイケメンスーツが来てないのよ。いったいどうしたんだろう?」

「へえ……?」

「もしかしたら探し物、見つかったのかもしれない。それが何か知りたかったけど……」



納得したようにうなずいて、彼女はまたハンバーグを食べることに集中し始めた。



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