竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

部屋に帰っても、母はまだ帰宅していなかった。


とりあえずエリはムカムカと腹を立てたり、落ち込んだりしながらも夕食の下ごしらえをし、それから熱いシャワーを浴びにバスルームへと向かった。


途中、携帯を見たけれど、マー君から連絡はない。着信もメールも来ていない。


携帯を持つエリの眉間にぎゅうっとしわが寄った。


連絡が欲しいわけでもない。だけど一切連絡をしてこないところに彼の弱さを感じて虚しさが募る。


こんな喧嘩、今まで何度もあった。

とにかくマー君はズルイ男なのだ。

二人の間に火種を持ち込むのはいつも彼なのに、こちらが怒ると黙り込む。


結局私がちょっとだけ小言を言って、許して……

そんなことの繰り返し。



いっそ別れればいいのにって、トモコにも言われたことがある。

誰だってそう思うだろう。浮気なんてされたくない。

だけど別れないのは、結局私が寂しいからだ。


誰かに側にいてほしい。
必要としてもらいたくて……私は彼と別れられないでいる。



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