Vampire's Moral





俊秀、目の事は完全に諦めてるんだと思ってたけど、まだ眼科医に行くつもりではあるんだ。
それが単純に、肝臓や腎臓の悪化を防ぎたかっただけだって理由だったとしても、少なくとも未来へ繋ごうとする行動なんだと思うし。


「分かった、俺も行くよ」

「サンキュー。悪いな、和明」



……いや、悪いとは思ってないけど。
こんな事になってるのも、少しは俺の所為だってのもあるんだし。

ただ、本当に悪いと思うなら、上野の願いの為に努力して欲しいな。
上野は、本当に俊秀の目を心配してるんだから。


「……和明? 聞いてる?」

「え、何?」


どうやら考え込んじゃって、俊秀の話を聞いてなかったらしい。
俊秀は電話の向こうで、小さく溜め息を吐いたみたいだ。


「……だから、時間。眼科、午後二時に予約入れちゃってるんだけど、それでも大丈夫?」


午後二時か、暑い時間だな。
それを先に言って欲しい。





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