クツズレ
 

 アパートに着いた僕は

「タダイマ!ゴメン、遅くなってしまった」

開口一番に謝った。

「おかえり!」

いつも通り、玄関に僕を出迎えてくれたのは、僕の可愛い奥さん。


そして靴を脱ごうとした僕の目に入る、彼女のペタンコの靴。


彼女のお腹には、今、僕たちの赤ちゃんがいる。


ハイヒールばかり履いていた彼女も、今はペタンコの靴で我慢してくれていた。


「赤ちゃんが生まれたら、エミにも新しい靴を買ってあげなくちゃな……」

僕はまだそれ程目立たない奥さんのお腹を撫でながら、小さく呟いた。

「本当?ウレシイ!」

奥さんは、うふふ、と笑った。


そんな様子を見た僕は、何とも言いがたい安心感につつまれたのだった。







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