鬼姫の願い
吐かれた息は間違いなく安堵のもの。
それは今まで義姫が決して見せたことのないものだった。
「…景綱に、くり貫いてもらったと聞いています。感謝せねばなりませぬぞ。そのお陰で梵は生きていけるのですから」
まるで梵天丸に言い聞かせるように語る姿は誠に母の顔で。
予想していなかった光景に、輝宗と景綱は驚きを隠せない。
声すらも、出せないほどに。
戸惑いを露にする二人の後ろに控えていた女中はそっと口を開く。
それは二人にとって信じられないような言葉だった。