鬼姫の願い
そんな義姫の態度に沸き上がる疑問。
「なら屋敷に迎えて直接会えばいいだろう。梵天丸はお前に嫌われていると思っているぞ」
小さく溜め息を吐きながら輝宗がそう言えば、一瞬だけ微かに震えた義姫の肩。
それでも彼女の顔が見えることはない。
二人の間に沈黙が流れる。
どれくらい続いたのかわからない長く静かな時間。
それを破ったのは義姫だった。
「それで、よいのです」
静寂に響く真っ直ぐな声。
呟くように吐き出された言葉に輝宗は眉をしかめる。
しかし義姫は輝宗に背を向けたまま言葉を紡いだ。
「ここは…冬になれば雪に囲まれる孤高の地にございます」