魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





「行くぞ。」

「え…っ 紗枝ちゃんは?」

「放っておけ。戻らない。」





犯人捜しに躍起になるからな。と幹久は小声で呟いたが凛は聞こえなかったため『え?』と聞き返す。しかし幹久は誤魔化すだけで、二度言うことはなかった。


幹久に手を引かれながら、不安げに振り返る。目の先には下駄箱。凛はふと思った。今日は“紙”が無かった、と。“紙”が無い変わりに“それ”が入っていた。


それは何故なんだろう―――?と首を捻る凛を、幹久は横目でジッと静かに見ていた。
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