一夜花
「は? ナニ美人?」
 
 ディナーに早いファミレスは客もまばらだ。無遠慮な声は大きく響いた。
 真山浩一は悪友をたしなめるように、わざと声を落とす

「だから、月下美人。一緒に見る約束をしていたのに……」

「それがいけないんだろ。マオも言ってたぜ。『優しいんだけど、変わってる』ってな」

 悪友は、もう何度目になるかわからない溜息を吐いた。

「三ヶ月か……まあ、もったほうだな」

「すまないな。せっかく紹介してもらったのに……」

 紹介された義理だけでマオと付き合っていたわけではない。

 明るい笑顔と八重歯が印象的な彼女を、浩一は本当に大事にしていたつもりだ。
 デートのプランを考え、ただ彼女を笑わせるためにプレゼントを選ぶのは何よりも楽しい時間であった。
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