それでも、愛していいですか。
「この間はごめんなさい」
深々と頭を下げた。
阿久津は黙ったまま、伏し目がちに唇にグラスを当てる。
しかし、口には含まず、そのまま固まっていた。
その微妙な沈黙に、美咲は固唾を飲む。
「……いや」
ようやく口を開いた阿久津はそれだけ言って、カシスソーダを口に含んだ。
「俺の方こそ悪かった。冷静さを欠いていた」
その言葉に、美咲は肩の力が抜けた。
「ううん。私があんなスケッチなんか見せたから……」
阿久津はグラスを置くと、大きく息を吐き出した。
「美咲の言うとおりだ」
「え?」
意外な言葉に、思わず阿久津の顔を見た。
阿久津はグラスに視線を落としたまま、
「俺は、駄目な人間だ」
と言って、苦笑した。
『私が支えてあげるから――』
研究室で言った自分の言葉を、美咲は思い出していた。