それでも、愛していいですか。
「いろいろあったんです」
そう言うと、奈緒は体中の息を吐ききるような大きなため息をついた。
その様子を見た君島は、にやりとして。
「そのため息は、それだけじゃないな」
頬杖をついたまま奈緒の顔を覗き込んだ。
「……阿久津先生のこと?」
その君島の言葉に、奈緒はびくっと身体に力が入ってしまった。
カップにコーヒーを注いでいたマスターの手も、一瞬だけ止まった。
君島は心配そうに奈緒の顔を覗き込んでいるが、奈緒は目を合わそうとはしない。
「……振られちゃった」
「え?」
「クリスマス、一緒に食事することになってたのに……」
「約束したのに、ドタキャンされたってこと?」
「ちゃんと連絡してくれたらドタキャンだっていいの。だけど……連絡なんにもなくて……私、ずっと待ってて……」
奈緒が俯いたまま消えそうな声で呟くと、
「そりゃ、あんまりだな」
と、君島も眉をひそめた。