それでも、愛していいですか。

「シュン、しゃべりすぎだぞ」

君島がぎろりとにらむと、シュンは「まあまあ」と君島をなだめた。

ちゃんと恋ができることが幸せ。

そんなこと、考えたこともなかった。

思えば、いつも、自分の中でぐずぐずと考えてばかりだった。

考えても仕方のないことをずっと、考えてた。

「物事を複雑にしているのは、ほかでもない、自分なんだよ」と言った君島先生の言葉が今、身に染みる。

本当にそうだ。

考えても仕方がない。

考えても答えなんか出ない。

それなら、考えるのをやめるか、したいように動くしか、そのループからは抜け出せないのだ。

私が阿久津先生を愛する資格があるかどうかを決めるのは、私ではない。

答えは、阿久津先生が知っている。

阿久津先生しか、答えを知らないのだ。

なら。

阿久津先生と話さなければ。

私は。

阿久津先生のところに行かなければ。

とっても怖いけど、もう一度だけ会いに行かなければ。

とっても不安だけど、もう一度だけ話してみなければ。

後悔しないように。

前に進めるように。

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