それでも、愛していいですか。
「ちょっと休憩しようか」
デパートや地下街を巡って、さすがに足がだるくなっていた。
「そうだな。どっかお茶するところ、ない?」
「あるある!ここからちょっと行ったところにおいしいケーキが食べられるお店あるんだぁ。そこ行こ!」
言い終わらないうちから、足が動き出す。
おいしいケーキを思い浮かべれば、足取りも軽くなるというものだ。
「急に元気になるんだな」
孝太郎は、奈緒の豹変ぶりを見て笑った。
デパートの裏手にある細い路地を少し歩いていったところに、その店はあった。
人気のある店で、いつも客で賑わっている。
「ただいま満席ですので、こちらでお待ちください」
と店員に言われ、二人は待合席に座った。
店の様子を窺いながらしばらく待っていると、レジへ精算しに行く客に目が行った。
その客は、喪服を着ていたので嫌でも目を引いたのだが、ふと顔が見えたとたん、思わず声が漏れた。