世界が終わる時の景色



「ねぇ、今夜は?」


長い髪を丁寧に梳かしながら鏡越しに日向を見つめる志乃。

黒目がちな瞳が朝日に反射して、綺麗に輝いている。


「旦那様が帰っていらっしゃいますので」

「いいじゃない、別に…

誰も私達の関係なんて気づかないわよ」

「用心するにこした事はありませんから。

志乃お嬢様、早く着替えてください。

遅刻してしまいます」

「……」

「…志乃お嬢様」

「…わかってるわ。

貴方は私の命令を聞いているだけだものね」

「……」


否定も肯定も出来ない、志乃の意地悪な問い掛け。

何も言えない自分が歯痒く、
ばれないように唇を噛む日向。



< 5 / 207 >

この作品をシェア

pagetop