甘え下手
沙綾がメニューを広げると、参田さんは「まぁ、いいか。翔馬(しょうま)に奢らせよう」なんて納得している。

参田さんの方のツレは翔馬さんというらしい。


ここでいいとこ見せないと翔馬さんにもってかれちゃいますよ。

なんて沙綾が簡単に男になびいたりしないコだと確信してるからこそ、気軽にこういう場にも呼べちゃうわけだけれど。


「ご注文はお決まりですか」

「上タン塩。黒毛和牛の特選カルビ。特上ロース。上ハラミ。本日の特選ミノ盛り合わせ。」

「ちょっ、比奈子ちゃん容赦ねぇー! 遠慮、遠慮! 俺、比奈子ちゃんの上司じゃなくて後輩よ?」

「あ、沙綾何飲む?」

「ファジーネーブルにしようかな」

「じゃ、ファジーネーブルお願いします。以上で」


店員さんが行ってしまった後、ガックリと肩を落とす参田さんを見て、少し気が晴れる。

たまには辛酸をなめるといいと思う。


「比奈子ちゃんってこんなSキャラだっけ?」

「えー、家だとこんな感じですよ。逆に会社だとお姉ちゃんどういう感じですか?」

「うーん、なんか一心不乱に仕事に没頭する感じ?」

「ええー、意外! お姉ちゃん仕事の話なんて家で滅多にしないですよ?」

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