甘え下手
どう思い返しても好意的な態度じゃなかった気がする。

お兄さんは阿比留さんが気に入らないんだろうか。


素行が悪かったから?


「あの人はさ、常に俺の上に立って俺を見下ろすことで自尊心を保ってんだよ」

「自尊心……?」

「俺も人のこと言えないけど。要するに俺らは捻くれた兄弟だから比奈子のとことは全然違うってこと」

「でも私この前さーちゃんと大喧嘩しましたよ?」


私達だっていつも仲良しな姉妹じゃない。

恋愛が絡めば女同士なんてドロドロだ。


その言葉に阿比留さんがプッと笑った。


「俺のせいで?」

「……うーん。自業自得なんです。分かってるけど痛いとこグサグサ突いてくるじゃないですか、兄弟姉妹って」

「グサグサ突かれちゃったの? 比奈子ちゃん」


阿比留さんが笑いながら私の胸を人差し指で突いた。

しっかりと膨らみの部分を。


私は一瞬目を真ん丸にして、それから慌てて身を引いた。
< 303 / 443 >

この作品をシェア

pagetop