甘え下手
***

「コレ美味い」

「きんぴらですか? 阿比留さん以外にお惣菜系好きですよね」

「意外って何?」

「お洒落な洋食ばかり食べてそうなイメージでした」

「男のひとり暮らしでそんなん食ってる奴いねーし。コンビニ弁当ばっかだし」


そんな阿比留さんの栄養状態が気になって、平日でもちょくちょくこうして食事を作りに来たりするようになった。


なんて。

本当は阿比留さんと一緒にいたいだけだけど。


相変わらずお兄ちゃんはうるさい。

だけど私が欠かさず連絡を淹れるようになってからは、怒ったりしつこく連絡してきたりはなくなった。


さーちゃんは私の外泊以来、諦めたのか阿比留さんとのデートにはついて来なくなった。

私に対しての態度も以前のままで、仕事帰りにスイーツを買ってきてくれたり、突然部屋にきて私に仕事の愚痴を延々語っていったりする。


以前の生活に恋人という彩りが加わっただけで、何も失ってない。

それが最高潮に私を幸せな気分にさせていた。
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