甘え下手
「で、鴨だっけ。食ったことないけど」

「……ヨロシケレバ今度一緒ニドウデスカ?」

「なんでそんな棒読みだよ」

「男の人を食事に誘うなんて、あんまなくて。どう言っていいのか分かんないんです」

「櫻井室長誘ってみれば?」

「いや、それがですね」


っと、またしゃべりすぎ。

途中で止めたのに、阿比留さんは若干引いた顔でつぶやいた。


「なんでそんなニヤついてんの。怖いんだけど」

「えっ。やだなあ、ニヤついてませんよ」

「……ま、いいや。にしても鴨って渋いチョイスだな」

「えっ、そうなんですか?」

「比奈子ちゃんの年齢で行くとこじゃないだろ」


チーン。

確かに櫻井室長には接待に使うお店を探してるって言っちゃったんだっけ。


鴨料理イコール本格的な料亭ってこと?

もしかして阿比留さん引いちゃった?


「鴨ってそんな美味いの?」


だけど阿比留さんは引いているというよりは、純粋に疑問に思っただけのようだった。
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