撮りとめた愛の色



時たまこうやって訪れるお茶の時間に準備されるものは、その日の彼の気分で少し変わる。


「今日は緑茶?」


今日はどうやら緑茶の気分らしい。茶葉を蒸し、彼は慣れた手付きでお茶を淹れる。それを横目に私は茶請けを2人分とちょっと準備する。意外にも甘いものを好む彼には、2人分では足りないからだ。


「そう。今日は何を?」

「羊羹《ようかん》を貰ったので、それを。羊羹ってあまり食べないしたまにはいいかなって」

「うん。いいね、懐かしい」

「でしょう?丁度緑茶にも合うだろうし」


笑いながら縁側まで歩き進めると2人でそこに腰を下ろす。定位置になりつつあるそこは今の時期、陽が当たってのんびりするには丁度良い。


部屋の中にいると黒にしか見えないのに陽の光を浴びると彼の髪は赤みがかって見える。本人も知らないだろうそれを知っているのはもしかしたら私だけなのかもしれない。


陽に透かされたような赤が綺麗だと思ったのは一体いつからだったのだろう。


「せんせ」


────私が『先生』と呼ぶ彼の名は荻原貴明《たかあき》。名前からも察せるように、ここオギハラ教室で書道の先生をしている。

とは言っても、その活動はボランティアみたいなもので習い事のような堅さはない。


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